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あなたや親の財産が成年後見人となった悪徳弁護士に食いつぶされてしまう?

成年後見制度というのをご存知でしょうか?

知的障害や精神障害、認知症といった精神上の障害によって判断能力が十分でない人が、不利益を被むらないように、家庭裁判所に申し出てサポートしてくれる人を選任してもらうという制度です。

判断能力の低下してしまった1人暮らしの高齢者などが、悪質な訪問販売などによって高額な商品を購入させられるといった被害が後を絶ちませんが、成年後見制度を活用することでそういった被害を未然に防ぐことも可能になります。

成年後見人には、親族以外にも弁護士や司法書士など社会的な地位が高いとされる人が家庭裁判所によって選任されることが多くなっています。

しかし、弁護士や司法書士といった法律の専門家が成年後見人になってくれるからといって安心はできません。

なぜなら、管理を任された被後見人の財産を、私的に流用して食いつぶしてしまうような悪徳弁護士や司法書士も存在するからです。

もしあなたやあなたの親が成年後見人を選任しなければならなくなったとき、彼らに託した財産は本当に大丈夫だといえるでしょうか?

※成年後見人には任意後見人と法定後見人の2種類がありますが、ここでは法定後見人について述べています。

繰り返される成年後見人となった弁護士による着服

成年後見人となった弁護士が、被後見人の財産を着服して業務上横領で逮捕される事例があとを絶ちません。

被後見人となる方は、判断能力や認知機能が低下している人たちです。

そういった人たちの財産を預かって管理をしているわけですから、悪用をしようと思えばいくらでもできてしまうわけです。

実際に、成年後見人をしていた弁護士が着服をして逮捕された事例を、いくつか紹介してみたいと思います。

預金口座から1830万円を引き出して着服した弁護士

成年後見人として管理を任されていた被後見人の預金口座から、合計1830万円を着服した名古屋の弁護士が、2016年10月に業務上横領の罪で逮捕されました。

被後見人は70代の男性で、逮捕された弁護士は2013年7月に家庭裁判所から成年後見人に選任されています。

2015年7月までの間に、計11回にわたり現金を引き出し、自分の口座に移していたようです。

多いときには、1回あたりの引き出し額は400万円にもなり、合計で1830万円を着服しています。

この悪質極まりない弁護士には、名古屋地裁より懲役2年4月の判決が言い渡されています。

判断能力の低下した人の財産を守るべき立場の成年後見人が、管理を任された財産を勝手に着服してしまうわけですから、警察官が泥棒をするのに匹敵するくらいの悪事といえます。

厳罰に処せられるのは当然です。

96歳の女性の口座から約4千万円を着服した40代の弁護士

2015年7月に、96歳の認知症の女性の成年後見人となっていた48歳の元弁護士が、女性の口座から無断で現金を引き出したり不動産を売却したりして約4千万円を着服したとして業務上横領で逮捕されています。

この48歳の元弁護士は、着服したお金を使ってキャバクラなどで豪遊していそうです。

さらに、この悪徳弁護士は、別の83歳の女性の成年後見人もしており、その女性からも約5千万円を着服しています。

弁護士が女性の財産を使い果たしてしまったことにより、その女性は入居していた介護施設の費用を支払うことができなってしまいました。

そのため、別の弁護士が追加で選任されることになりましたが、使い込みをした悪徳弁護士は自分の悪事が発覚してしまうことを観念して2014年10月に警察に自首しました。

このとき弁護士登録を抹消しているため、逮捕されたときの肩書は元弁護士となっています。

このような悪徳弁護士が将来あなたやあなたの親の成年後見人に選任される可能性も、絶対にないとは言い切れません。

財産を使い果たされて、自分が入居している介護施設の費用すら払えなくなってしまったのでは、まさに泣くに泣けないでしょう。

成年後見人が悪いことをしようと思えばいくらでもできる

赤の他人である弁護士が、好き勝手に預金口座から現金を引き出したり、勝手に不動産を売却したりできてしまうことに、驚く人もいるかも知れません。

しかし、成年後見人となることで、そういったことが法的に可能になってしまうのです。

成年後見人は、本人の通帳と印鑑をあずかってお金の出し入れや解約したりということができますし、本人名義の不動産を処分したりすることも可能です。

あるいは、保険金を受け取ったり、財産分割などの相続手続きをしたりすることも成年後見人であれば行うことができます。

また、成年後見人は、本人が行った契約などのさまざまな法律行為を取消しすることも可能です。

家庭裁判所から選任された見ず知らずの第三者に、これほどの権限を与えてしまうのが成年後見制度なのです。

つまり、成年後見人が悪いことをしようと思えば、いくらでもできてしまうわけです。

家庭裁判所は、成年後見人に対して後見事務の報告や財産目録を提出させることによって、不正が行われていないか監視・監督することになっています。

しかし、数千万円単位の堂々とした着服が繰り返し行われているという事実を考えてみると、家庭裁判所による監視・監督業務がまともに機能しているかどうかは甚だ疑問です。

弁護士などの第三者が家庭裁判所から選任されることが多い理由

成年後見人には、親族か弁護士などの第三者の中から家庭裁判所が選任することになります。

2010年には、親族が成年後見人になる割合が55.6%、親族以外の第三者がなる割合が44.4%でした。

当時は、親族が成年後見人となる割合が高かったのです。

ところが2017年には、親族が成年後見人となる割合はわずか26.2%まで減っており、逆に弁護士などの第三者がなる割合は73.8%に大幅に増えています。

第三者が選任されることが多くなったのは、成年後見人となった親族が、被後見人の財産を勝手に使い込んでしまったりするなどのトラブルが多発したことが原因とされています。

そのため、次の項目に該当するようなケースでは、家庭裁判所は弁護士や司法書士などの第三者を選任することが多くなります。

●親族どうして意見の対立があるようなケース
●被後見人に家賃収入などの事業による収入がある場合
●被後見人の所有する財産の額が大きいケース
●被後見人と後見人候補の親族に利害の対立がある場合
●後見人候補の親族が高齢である場合

つまり、「親族に成年後見人をさせると使い込みをしそうだから、弁護士か司法書士に任せることにしよう」と、家庭裁判所が判断をするわけです。

しかし、親族より安心できると家庭裁判所が判断した第三者の弁護士が、被後見人の財産を食いつぶして逮捕されるケースもまれではないということは、先に書いた通りです。

財産を預けている被後見人は判断能力が低下してしまっているわけですから、自分の財産を着服されてしまったとしても、まず気がつきません。

たまたま派手に着服をした悪徳弁護士が逮捕されて話題になったりしますが、これは氷山の一角に過ぎないと思います。

認知症になってしまった被後見人の財産を着服している悪徳弁護士や司法書士は、たまたま表沙汰になっていないだけで、実際にはかなりいるに違いありません。

家庭裁判所が親族ではなく、弁護士や司法書士などの第三者を成年後見人に選任するということは「弁護士や司法書士は悪いことをしない」という性善説にもとづいているのだと思います。

しかし、弁護士や司法書士といっても所詮は同じ人間ですから、聖人君子ばかりではないことは言うまでもありません。

自分の親の成年後見人として、第三者の弁護士が選任されて、その弁護士が財産を食いつぶしてしまったりした場合、子どもにしてみれば泣くに泣けません。

自分が成年後見人に選任されなかったばかりに、親が亡くなったあとに自分のところに入ってくる予定だった相続財産を見ず知らずの悪徳弁護士に食いつぶされてしまうわけですから、これほど悔しいことはないに違いありません。

しかし、家庭裁判所が成年後見人として第三者を選任してしまうと、残念ながらどうすることもできないのです。

後見開始の審判に関しては即時抗告をすることができますが、後見人の選任に関しては即時抗告ができないことになっているのです。